リヴァープレス社
写真:三上信夫
写真:三上信夫
2010年1月20日発行 四六判・108頁 本体2,800円+税
教員だった三上信夫(1927-2008)は、
山奥で働く母親たち・子供たちが
ため息のように、話し言葉そのままに綴る
言葉を集めて文集を作り続け、写真を撮った。
ため息のように、話し言葉そのままに綴る
言葉を集めて文集を作り続け、写真を撮った。
文集も写真も、自身の作品とするでもなく、
書き手を組織して売り出すようなこともなく、
ただ記録として集め続けた。
昭和20~30年代(1940~60年代)
岩手の、特に北上山系を中心とする地域は
「日本のチベット」と呼ばれるほど、
山に隔絶された辺境の地だった。
冷害がおき飢饉ともなれば多くの人が亡くなり、
家族が生きるために子を売らなけければならなかった。
現代からわずか半世紀前の話である。
歴史の中の話として切り離すには、あまりにも近い。
歴史の中の話として切り離すには、あまりにも近い。
その過酷な寒村の姿が、写真からは読み取りづらい。
写真集に映る母親も子供も男たちも、
ごく自然に作業をしている姿であり、
休憩とおぼしき場面では、皆が屈託なく笑っている。
環境が過酷な時は苦しみながら支え合って耐え、
穏やかな時は笑い合いながら楽しみ、
そうやって生きている。
過剰に便利な時代を生きる我々には俄に信じがたい、
命の危険と隣り合わせるような時代や環境のなかで、
人々は現代と何も変わらず、
命の危険と隣り合わせるような時代や環境のなかで、
人々は現代と何も変わらず、
楽しみもありながら、そこでただ生きている。
人が生きるということが、はっきり描かれている。
時間が経ってから過去を振り返るとき、
「過酷な時代」「苦難の時代」と簡単に形容し、
それが全てだったように思ってしまいがちだが、
どんなときでも人は日々を生きていた。
良い日もあれば、悪い日もあったのだ。
「過酷な時代」「苦難の時代」と簡単に形容し、
それが全てだったように思ってしまいがちだが、
どんなときでも人は日々を生きていた。
良い日もあれば、悪い日もあったのだ。
日々の記録に徹したがゆえに伝わる
温かさと冷たさが、この写真集にはある。
温かさと冷たさが、この写真集にはある。