中原中也 沈黙の音楽

岩波書店
佐々木幹郎
2017年8月30日 第一刷発行 新書判・304頁 本体900円+税

















中原中也といえば、「汚れつちまつた悲しみに」と
「ゆあーん ゆよーん ゆあゆよん」である。

あまりに有名な、強い印象を残す言葉。
響きはとても音楽的で、軽やかで、
現代から見てあまり違和感がない。

中也は、明治末期に生まれて昭和初期まで、
わずか29年しか生きなかった。
その時代に、この言葉を生み出し、語り、歌った、
ということを想像してみると慄然とする。

大岡昇平に言わせると、「汚れつちまつた」は
本来「汚れちまつた」となるべきところを、
東京弁を間違って真似たもの、ということに
なるのだそうだ。

だが、促音の「つ」が一文字入っただけで、
この詩(歌)は傑作となり、時代となった。

酒癖も口も悪い人だったようで、そのことと
音楽的な言葉の選び方、運び方の感じから
変な意味でのロックンロールを感じたりもしたが、
それだけの人物でもなかったようである。

「盲目の秋」「生ひ立ちの歌」を、大震災を経た岩手で、
軽々と読み流すことはできない。