賢治と鉱石

工作舎
加藤碵一+青木正博
2011年7月20日第一刷 A5判上製・272頁 本体3,200円+税

















宮沢賢治は幼少から石や昆虫が好きで、
小学生で早くも標本づくりに熱中するようになった。
それで家族から「石コ賢さん」とあだ名された。

高校に上がってからも石が好き、
大学に入ってからは土壌学を学んでいたから、
童話や詩、小説を発表するようになってからも
石には親しむ日常だったのだろう。

それもあってか、彼の作品には石の名前が、
特に何かを形容するときによく使われ、
それがまた美しい。

ターコイズを「ターキス」と読ませて
短歌のリズムを整えたり、
オパールは「オウパル」と振り仮名を振っているが、
これは英語名に忠実にしてあったり。
鉱石の背景をよく知っていて、その知識が
彼の文学の中にひとつの世界を作っている。

賢治の作品は文体や単語の柔らかさと美しさから
幻想的と表現されることが多いが、
ときに文脈を掴みづらく難解になる。
それが何故なのか、鉱物と作品を紐づけて解く
この本を読んで、一気に靄が晴れたように感じた。

昔、春と修羅にガスタルダイトという言葉が出ていて
なんのことかわからなかったのだが、
それが何で、なぜそう書いたのかについての解説は
謎解きのようにカタルシスがあった。

本書の副題は「文系のための鉱物学入門」であり、
帯の推薦文には「賢治が見ているものを
彼の肩越しに見るような思い。」とある。
看板にまったく偽りなし、である。

文学者として有名だが歴とした科学者でもあった宮沢賢治が、
どういう思いで数多の作品をあのように表現したのか、
今までで一番、彼の心情に近づけた気がする。