本にまつわる世界のことば

温又柔・斎藤真理子・中村菜穂・藤井光・藤野可織
松田青子・宮下遼 著 / 長崎訓子 イラスト
2019年5月21日第一版第一刷発行 B5判変型・104頁 本体1,600円+税
















創元社刊行の、本書を含むこのシリーズのなかで、
本書は少し毛色が違う。
本にまつわる言葉をモチーフにした短編小説があったり、
エッセイがあったりする。

ドッグ・イヤーや斜め読みなど、よく聞く言葉もあるが、
世界中には本当に様々な言語があり、
それはつまり様々な価値観があるということだと、
痛感させられる。

いつも本を読んでいる、という印象の人を、
日本では“本の虫”と呼ぶ。
ペルシャ語でも似た意味の言葉があるが、
どちらとも、若干の揶揄と、もう少し多い愛情が
含まれているように思う。
本の虫の身びいきかも知れないが。
ペルシャ語はどういう言葉で、
何の動物に例えているのかは
ぜひ本書で確かめてみてほしい。


たまたまこの本が入荷する直前に、
ザ・ブックセラーズ」を見た。
古書、稀覯本を扱うブックセラー達を追った
ノンフィクション映画で、
一口では言えない面白さがあった。

ブックセラー達はみな、出版業界が経済的に
酷い状況になりつつあることはもちろん知っている。
悲観もしているが、本そのものの未来に対しては
洒脱なユーモアと共に楽観している。

本編にしばしば出てくる、作家・批評家の
フラン・セボウィッツは、見るからに
骨っぽい風貌のおばさんなのだが、
言うことが辛口でユーモラスで面白い。
彼女が、本の上にグラスを置く男を見たら
絶対にコロス、と早口で言ったのには笑った。
共感したし、言い方も良かった。

登場するセラー達は、ほとんどみな古書店である。
新刊は扱わないので、ものの見方がおのずと
書肆みず盛りとは異なる。それもまたいい。

本を愛する気持ちだけがあれば、
それで充分なのだ。