下水道映画を探検する

星海社新書
忠田友幸
2016年4月25日第一刷発行 新書版・288頁 本体920円+税

















本書の著者は、名古屋市の下水道局で長く勤めた
ホンモノの下水道のプロだそうである。
そういう方が映画も好きだと、こういう傑作を書ける。

下水道映画というからには、下水道が舞台になる映画を
紹介するんだろうな。
まずは逃走シーンが有名な『第三の男』。
連続ドラマのほうは世代が違うが、
トミー・リー・ジョーンズが演じたジェラード保安官補が
抜群にかっこよかった『逃亡者』。
『ショーシャンクの空に』も脱獄シーンが
下水道じゃなかったっけ。

内容を想像してわくわくしながら目次を見ると、
当然のようにそれらは載っていたが、
一番最初は『ネズミ編』という章だった。
なるほど、ネズミとかモンスターとかは
こと映画に関する限り、下水道と相性が良い。

ほかにも『災害編』『強奪編』など
章立ても巧くて引き込まれて読んだ。
もちろん、下水道の構造や、画面を見ただけで
これはセットであろう、こういう部分が実態と違う、
といった指摘もさすがの知識量で、笑いながらも
こんなに勉強になる本は久しぶりである。

そして、下水道が舞台になるというと
どうしても海外の映画のほうが多い印象があるが
実態もそうであるらしく、少数派の邦画の中でも
描写が良かった『ゴールデンスランバー』の節は、
映画を愛し、下水道を愛し、日本の下水道事業を
誇りに思っている著者の面目躍如といったところで、
愛と知識が満ちあふれ、結構濃密な一節なのだが
それでも相当削ったんだろうなあと
微笑ましく読ませてもらった。

下水道は、現代では生活に不可欠な設備でありながら、
全貌が地下に埋もれて日常では意識できない
日影の存在である。

それだけに、映画と結びつける意外な視点から
正確な知識を勉強させてくれる本書は、
手軽な新書ではあるが名著と呼んで良いと思っている。